笛吹き女

笛を吹き候(そうろう)
笛吹きて悔ゆるのに候
笛吹きて祈るのに候
笛吹きて生くるのに候

尺ばかりなる篠竹の
あな手作りのおぼつかな
唯(ただ)かりそめのすさびにも
笛吹く子にて候(そうら)いしが

笛を吹き候
笛はしろがね
早瀬(はやせ)のままに冴(さ)ゆる初鮎(はつあゆ)
音(ね)はむらさきの秘めごとに候

笛を吹き候
笛は真(まこと)
笛は神
まずおろがまではもの申されぬ

笛吹けば
子犬立ち止まり候いぬ
雀(すずめ)おどり候いぬ
壁耳を傾け候いぬ

笛を吹さ候いしが
もの売り人(びと)の声の聞こえしかば
はた とばかりに吹き止め候
やがてまた吹き出づるのに候が

ひゅひゅらひゅひゅらと
吹くは孤独の笛に候
あはれ いつよりか
ぴえろうは涙を忘れけむ

寂しとや
悲しとや
むなしとや
されどなお笛吹くことの候に

哭(な)きたまえ
只(ただ)哭きたまえ
哭きつかれては笛吹きたまえ
望みは一管の笛にのみやどり候

人のおもいを吹きすましては
いよよおどけし世のふりの
名もうつしみもなべてものかは
笛のはしため笛を吹き候

笛吹かばや
春にて候ものを
笛吹きて雲の懸橋(かけはし)を渡らばや
笛吹きて天の戸をおどろかさばや

リラのかおりを音(ね)にこめて
今宵(こよい)まいるは異国(ことくに)ぶりの牧歌調(まどりがる)に候
酔いたまえ
異国(ことくに)ぶりの月もおかしきに



詩  深尾須磨子
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by akikoj-happy | 2008-08-05 11:59 | 音楽(クラシック)

お稽古日記、すきなこと、すきなもの、すきなひと


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